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Part2.最高師範の威力は絶大だ!の巻

この話は約20年くらい前自分がアラバマの総本部で内弟子をしていた頃の話である。その日はとても日差しの強い日であった。正確な日時は忘れてしまったが、それだけは覚えている。なぜなら今回僕が怒られる原因になったのは、その強い日差しのせいなのだから・・・。

ちょうど午後の筋力トレーニングの時間が終わり、その後のキッズクラスが始まるまでのつかの間(15分くらい)の休息の時間であった。

その時、最高師範は用事で外に出ていて、道場にはとても平和な時間がゆっくりと流れていた。この数分後にとんでもないことが起こるとは、この時誰も想像していなかった。

しばらくすると、道場の裏の方で「ブォ~ン」という音がする。

補足説明しておくとアラバマの総本部は、大通りに面した入り口と、ちょうど反対側に結構大きな両開きの裏の出入り口があり駐車場につながっている。

この「ブォ~ン」は最高師範が裏の出入り口にある駐車場に車で戻ってきた音である。この時期、風通しを良くするために裏の大きい両扉は開けられていて、最高師範の車が駐車場に入ってくるのが見てとれた。ちなみに当時、最高師範は、白のBMWと家族用の紺色のワンボックスカーに乗っており、その時は紺色のワンボックスカーで戻ってきた。

​そういう時、我々内弟子は稽古中でなければ、必ずその出入り口のところまで行って直立不動で最高師範を出迎えなければならない。この時少しも動いてはいけない。

その時も、稽古の合間で、なるべく体力を温存しようと座って柱にもたれてグタ~としていたのだが「ブォ~ン」と聞こえるやいなやロケットダッシュで裏口まで走っていき直立不動、微動だにせずにいた。

​ちなみにこの時、他の内弟子は着替え中だったのか、人に対応していたのかは思い出せないが、なぜか自分1人だけだった気がする。

車はすぐ目の前の駐車枠に前向きに入って止まった。

5秒くらいたつ・・・

​(あれ?最高師範、降りてこないな~?)

最高師範は究極のせっかちなので、いつもは着くと0.1秒くらいで車から飛び出てくるのだが、その時は、すぐには降りてこなかった。

車の中で何かやっているのだろうか?中を見ようと思ったのだが、強い日差しのせいでフロントガラスに光が反射して中の様子は、まったくわからなかった。角度をずらして中を見ようと思ったのだが、その時、昔、先輩に言われたことが頭をよぎった。「待っている時はフラフラしてはいけない、微動だにしてはいけない。」という言葉を。ということで、ここは直立不動、動いてはいけないぞ、と心に言い聞かせ待つ。

すると、どこからともなく 「ドン」 「ドン」 っと、かすかに音が聞こえてきた。

(あれ?この近くで工事でもしているのかな?)と思っていると、

​「ドン」   「ドン」   「ドン」 

 

だんだん音が大きくなっている。

よく耳を澄ましてみると、なんと!目の前の最高師範の車の方から聞こえてくるではないか!かすかに声らしきものも聞こえてくる。ただ中の様子はまったく見えない。でも、これは何かあると思い、車に近ずいていくと、フロントガラスに反射する光の角度が変わり、反射がなくなって、少しずつ中のようすが見えてきた。

なんとそこには烈火のごとくお怒りになった鬼の形相をした最高師範があらわれた。そして、

「ドン」      「ドン」   「ドン」

 

「#$%&~!!」     「#$%&~!!」    

 

この 「ドン」 は、最高師範がフロントガラスを内側からグーで叩いている音だったのだ。そしてさらに激しく叩きながら何か大きな声で怒鳴っている。ただ、車の窓は全部閉まっていて何を言っているかは、はっきりとは聞き取れなかった。

なにが起きているかは、さっぱり解らなかったが、何か大変なことが起きているのは間違いない。なぜなら、今まで、さんざん最高師範を怒らせてきたが、その中でも最大級の怒り方なのだ。

​すぐに、ぼくの得意技「オース オを繰り出そうと思ったのだが、窓が閉まっていて声が届きそうにない。

 

補足説明しておくと、

このように、いったいいつの間に最高師範を怒らせてしまったのか、どこで最高師範の地雷を踏んでしまったのか分からない時がたまにある。なんせ埋まっている地雷の数が半端ないのだ。しかも分かりずらいとこに埋まっていることがあり、えっ、こんな所にも埋まってたの、ということがたまにある。なので地雷を全部よけて行くのは不可能に近いと思われる。

こういう時、自分はとりあえず、あの得意技「オース オを連呼して最高師範の怒りを抑えつつ、怒っている原因を探るのがぼくの常套手段なのだが、今回はそれも使えない。もっとも、さすがにここまで怒ってしまうと、時すでに遅しでこの技が効かないのはすぐにわかった。なので本来は、ここまで怒ってしまう前に「オース オを繰り出して従順と反省を示して怒りをやわらげておくのが正しい使い方である。

​話がそれたので本題にもどす。

「いったい僕はどうすればいいんだ~!?」「何をすればいいんだ~!?」

一瞬頭がパニック状態になって車の前で右往左往してしまう。

その瞬間にも、最高師範は、さらに激しくフロントガラスを叩きながら、さらに大きな声で、

「ドン」      「ドン」   「ドン」

 

「ここだ~!!」    「ここだ~!!」 

えっ、何?

(最高師範、そこにいるのはわかっています。)

一瞬、最高師範はおとぎ話の世界に入り込んでしまい、ぼくが見えなくなってしまったのかと思ったが、そんな訳はない、なぜならぼくは、すぐ目の前にいるのだから。

​さらに激しく叩き、さらに鬼の形相で、

「ドン」      「ドン」   「ドン」

「*#$%&@:$!!」    「ここだ~!!」      「ここだ~!!」

 

これはマジでやばい。ぼくの生命危険ランプがそれを教えてくれている。ただ、いったい何をどうすればいいのかさっぱり分からない。

「ここだ~」の前に何か言っている気がするのだが、窓が閉まっているせいで声がこもってはっきりとは聞き取れない。

​ただただ車の前でマゴマゴしてしまう。

(いったい何がどうなっているんだ~?神様ぼくをお救いください、神様お願いします。)もう神に祈るしかない。

その間にもフロントガラスを叩く音と怒鳴り声は一層大きくなり

「ドン」   「ドン」  「ドン」

「*#$%&@:$!!」   「ここだ~!!」   「ここだ~!!」

「こ!」 「こ!」 「だ~!」

「ガッシャーン!」 

「バリバリバリバリバリバリ!!」

 

すさまじい破壊音と共に、目の前で何かが粉々に砕け散った。

​一瞬何が起こったのか分からなかったが、なんと最高師範のグーがフロントガラスをぶち破ったのであった。

車のフロントガラスというのは、とても頑丈に作られている、と聞いたことがある。そのフロントガラスがいとも簡単にコナゴナになったのである。

やはり最高師範の技の威力は凄まじい、なにげなく叩いていても力が一点に集中しているため、とんでもない威力を発するのだ。

ひょとして最高師範は、この鉄槌によるフロントガラスの試し割りを、自分に見せてくださったのかと思ったが、そうでないことは一瞬で理解した。

結局、後で分かったことは、フロントガラスの「ここだ~!」と怒鳴っていた場所に鳥のフンが着いていて

「ぞうきん持ってきて、すぐに拭いてきれいにしろ!」

と言うことだったらしい。

ちなみに、その後、いつもの1000倍おこられ一週間に一度の貴重な外出が禁止になったのは言うまでもない。

 

「押忍!最高師範、失礼しました。

「オース オスオスオスオスオス​!

 

 

P.S これはマンガや小説の話ではない。実話である。信じるか信じないかは、あなたしだい。

P.S   今思えば最高師範は着いた時から自分を呼んでいて、自分が気付かないでボケーっとしているように見えたので怒りが頂点に達したと思われる。武道家たるもの目で見えなくとも気配で察しなくてはいけないのだ。この頃の自分は、まだまだ未熟でした。今だつたら100メートル先でも気付ける気がする。信じるか信じないかは、あなたしだい。

P.S 念をおしておくと、最近の最高師範はとてもやさしい。信じるか信じないかは、あなたしだい。​いや、これは間違いない。「オース オ

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